缶コーヒーと名刺【*】

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 指先の感覚が遠く感じる。  波月(はづき) (うた)は投げ出した手の先を潤む瞳で見つめ、唇の端を伝い落ちる唾液に肌を震わせた。 「っ、痛い、?」 「ん、ぅや、ぁ……、あ、」  控えめに喘ぐ詩は、何も答えない。  もはや焦点も合っていない瞳を覗いた男は、額に張り付いた髪を掻き上げ、無防備な詩の唇に柔く歯を立てた。 「っ、う」 「飛ばないでよ、まだ」 「ふ、は……ぁ、う、やぁ……」  シーツに髪を散らし、詩が涙を落とす。  頬を伝うそれに舌を這わせた男は、ふっと頬を緩め、赤く上気した詩に額を重ねた。 「焦れったいって煽ったの、君だろう」 「そ、だけど……ぉ、あ」 「ちゃんと付き合って。ね、最後まで」  どろりと、脳が溶けていく音がする。  詩はぴくりとも動かない指先を見つめたまま、這い上がる快感にか細く声を上げることしか出来なかった。
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