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指先の感覚が遠く感じる。
波月 詩は投げ出した手の先を潤む瞳で見つめ、唇の端を伝い落ちる唾液に肌を震わせた。
「っ、痛い、?」
「ん、ぅや、ぁ……、あ、」
控えめに喘ぐ詩は、何も答えない。
もはや焦点も合っていない瞳を覗いた男は、額に張り付いた髪を掻き上げ、無防備な詩の唇に柔く歯を立てた。
「っ、う」
「飛ばないでよ、まだ」
「ふ、は……ぁ、う、やぁ……」
シーツに髪を散らし、詩が涙を落とす。
頬を伝うそれに舌を這わせた男は、ふっと頬を緩め、赤く上気した詩に額を重ねた。
「焦れったいって煽ったの、君だろう」
「そ、だけど……ぉ、あ」
「ちゃんと付き合って。ね、最後まで」
どろりと、脳が溶けていく音がする。
詩はぴくりとも動かない指先を見つめたまま、這い上がる快感にか細く声を上げることしか出来なかった。
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