缶コーヒーと名刺【*】

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 友人の答えは、イエスでもノーでもなかった。  性癖を打ち明け、想いを告げた詩に、彼はあんぐりと口を開け、そして、引き攣った頬で笑ったのだ。  目に、仄かな嫌悪を覗かせながら。 「そうだったんだな、今まで気がつかなくてごめん。でも俺、そんなことで詩のこと避けるとかしないから。誰を好きになるとか、そんなのは自由だと思うし」  いっそ、手酷くフラれた方がどれだけ楽だっただろうかと、詩は今でも思う。  否なら否で構わなかった。気持ち悪いという答えも、傷付かないといえば嘘にはなるが、諦めるきっかけにはなったことだろう。  だけど、無かったことにされるなんて。  引き攣った頬で笑う友人に、詩は自分の想いが彼を苦しめたのだと気が付いてしまった。  彼の優しさに、詩を傷付けない最善を選ばせてしまったのだろう、と。
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