12人が本棚に入れています
本棚に追加
「師匠までそう言うなら…ええと。では、『けれど、狩人は幼い白雪の美しさと、泣き出した白雪に心を動かされ、小さなお姫様が可哀相になりました。白雪姫、早くお逃げなさい、と白雪を殺さずに逃しました。けれど、手ぶらで帰れば、后に疑われてしまう。何か証拠が無いと、后は信じてはくれないだろう、と考えた狩人は、飛び出してきたイノシシの子を狩り、その血をハンカチにつけ、お城へ戻ります。狩人の証言と、ハンカチの血に、とても満足した后は、白雪は完全に死んだものだと、疑わなかった。けれど』」
「お姫様は生きてた!」
「そうだね」
ケビンの声に、一区切りをつけた僕は、室内に用意されている飲み物で、乾いた喉を潤す。
『湊の説明は、いつも、朗読を聞いてるみたいでワクワクする』
「ニルス、褒めすぎだよ」
『そんなことない』
カタン、とイスに座った僕に、ニルスは楽しそうな顔をしたまま、首を横に振る。
『私も、湊君の説明を聞くのは好きですよ』
「師匠まで…」
ふふ、とソファに座って微笑む師匠の言葉に、照れくさくなり、ぽり、と頬をかく。
「でもさぁ、この物語で、俺達がこんな町中から離れた場所に居なきゃいけない理由が、俺、よく分からないんだけど。何で?」
頬杖をついて、僕を見るケビンに、「それは、多分」と言いながらニルスを見れば、立体映像のニルスが、大きな紙を僕達がいる室内のテーブルの上へ置く。
『今回の修復【白雪姫】の国の大体の地図。そして、この赤い線は、后が所有する魔法の鏡の干渉エリア、だと思われる範囲』
トン、とニルスが自身がテーブルに置いた紙に映し出された地図を指し示しながら、僕たちへ説明する。
最初のコメントを投稿しよう!