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「お待たせしました。オリヴァさん」
「あ!修復屋さんっ」
「はい。修復屋リコルヌです。ええと、オリヴァさん、これから先、湊、と呼んでいただけますか?」
ケビンと別れ、待ち合わせへと向かえば、林檎の箱を積んだリアカーと共に待つ依頼主のオリヴァさんの姿が見えた。
「いや、でも……」
「僕はオリヴァさんのところの弟子、ということになっていますので」
「はあ……ですが」
「弟子に、さんづけでは、少し不自然になるかと」
「……では……ソウくん、とお呼びします」
困惑した表情を浮かべながらもどうにか僕の名前を呼んだオリヴァさんに、「はい」と笑顔で頷く。
「オリヴァさん、林檎を一度、拝見しても構いませんか?」
「え、ああ、どうぞどうぞ!」
「ありがとうございます」
カタン、と林檎箱の蓋を外して中を見れば、見事な色艶の林檎が箱の中に並んでいる。幾つかある箱の中身はどれも出来の良い林檎ばかりで、その中でも、1箱だけ別に置かれていた箱の中身の林檎は、見た目はもちろんのこと、香りも格別だった。
「この箱の林檎が、お后様にお渡しするものですか?」
蓋を閉めながらそう問いかけた僕に、オリヴァさんは「ええ」と大きく頷く。
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