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ガラ、ガラ、とリアカーがゆっくりと進む。
「いつもは、お城の中で、使いのかたに誘導されて、林檎を運ぶんでしたよね?」
「ええ。ワタシが運ぶ分は、調理場で使うものですので、調理場付近にいつも運んでおります。お后様にお持ちする分は、使いのかたが」
「なるほど。その使いの者は、いつも同じ人ですか?」
「ええ。問い合わせたのも、その方なのですが……いつも、別の箱など見ていない、届けていないのだから代金は払わぬ、と…お城から必要とされるだけでも光栄だと思えと……」
「………なるほど」
なんて傲慢な、と僕が思うのと同時に『その城のやつ、フルボッコにしていい?』と無線機越しのニルスから不穏な言葉が聞こえ「はは……」と思わず苦笑いが浮かぶ。
「ええと、とりあえず正直に云うと、僕たちにも時間があまり有りませんので、今日中に解決したいと思います」
「え、今日中ですか?!」
「ええ。ですので、いくつかお願いがあるのですが」
「……は、い?」
お城からまだ少し離れたところで、オリヴァさんに小さな声で耳打ちをする。
はじめのうちは、「え?!」と驚いていたオリヴァさんだったが、次第に理解してくれたらしく、最後には「よろしくお願いします」と深く頭をさげられた。
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