12人が本棚に入れています
本棚に追加
第4話 特別な林檎
「階段、階段……って、コレか?」
それなりに華やかだった廊下を突き進んだ先に、ばあ、と視界が広くなる。
壁には大小様々な絵画や、芸術性とは何かと問われているような何やらよく分からないモチーフに、剣先に宝飾がされていて実戦では使えない剣、それに天井から明かりを四方八方に散らす豪華なシャンデリア。
以前にも同じように仕事で本の中の城に入ったことがあるが、この城の飾り付けは妙にゴテゴテとしている。
「まあ人の好みはそれぞれだしな」
大広間の様子にぼおっと立ち尽くしそうになったところで、名前が分からないので、先輩Aと呼ぶことにした先輩Aの助言通りに大広間の階段を探せば、それは直ぐに見つかった。
大広間の壁に沿って、長く、ぐるりと緩やかな階段が続いている。
ご丁寧に、階段には赤い絨毯のようなものが敷かれていて、階段自体も存在を主張しているようだった。
「階段下には兵は置かないんだな」
本当に、護衛という意味の近衛兵では無いのだなあ、と少しでも強い奴がいるのでは、と期待していた俺は階段を見上げながらほんの少し肩を落とす。
『そんなに戦いたいなら帰ってきたら湊に稽古つけてもらえばいいじゃない』
最初のコメントを投稿しよう!