第4話 特別な林檎

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 ニルスと俺は魔法使いの素質はほぼ皆無だけど、小さい頃から不思議なものが見える体質だ。ニルスはもともと魔法自体に興味を持っていたらしく、リコルヌで働くと決めた時から、仕事を技術面から支えると決め、魔法についても相当研究したらしい。  まぁ、それは今も、で、たまに「前の担当は何でこんな風にこの魔法で……」とかブツブツ言いながら店の中を弄っていたりするから、努力家なのは十分に伺える。  店長のユーグはもう説明不要なくらいにかなり凄い魔法使いなのだ、と湊がよく言っている。  湊は一人前の魔法使いだけど、まだまだ発展途上らしい。  違う次元に人を運べることが凄い事で、湊もいつかは自分も、と空き時間があれば魔法の本を読んで勉強している。  そんな(そう)とニルスが言っていた言葉だ。  俺にとっては、誰よりも信用できる。 「あとでまた繋ぐ」 『ケビッ』  プチ、と無線機の電源を切る。  その瞬間、身体中に感じていた視線が、すぱっ、と離れたのが分かる。 「……ちょっと面倒なタイプかあ」  ボソリ、と呟いた時、「おい、お前」と階段の上のほうから低い声とともにフワ、と甘い香りが鼻先を掠めた。     
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