第4話 特別な林檎

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◇◇◇◇◇◇◇◇ 『(そう)!』 「ん?ニルス、何かあった?」  慌てた様子のニルスの声が耳に響く。 『今、ケビンが大広間の階段上に向かったんだけど、ケビン、無線切っちゃって』 「無線を……?鏡に無線を気づかれたのかな」 『そうかも知れませんね』 「師匠」  コソ、と話した僕の声は、前を歩く人間には聞こえていないらしい。  僕の前を歩くのは、近衛兵ではなく執事服を着た人間で、地下にある調理場付近の食材置き場でオリヴァさんが「この人がいつもの人です」と耳打ちしてから数分後、林檎を持ってついてくるように、と指示があり、コツコツ、と地下から上階にあがるための階段を、オリヴァの大切に育てた林檎を抱えて登っていく。 「極力、魔力を抑えたものに改良したつもりだったんですが……まだダメでしたね……」 『そんなことは無いですよ』 「けど……」 『現にギリギリまで近づかないと気づかれなかったのですから、十分に凄いですよ』 「……ありがとうございます」  師匠に褒められた、と喜ぶのも束の間『ですが……』と続い師匠の言葉に、直ぐに気持ちを切り替える。 『私たちからの通信は一旦、止めておいたほうが良さそうですね』 「……そうかも知れません」     
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