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◇◇◇◇◇◇◇◇
『湊!』
「ん?ニルス、何かあった?」
慌てた様子のニルスの声が耳に響く。
『今、ケビンが大広間の階段上に向かったんだけど、ケビン、無線切っちゃって』
「無線を……?鏡に無線を気づかれたのかな」
『そうかも知れませんね』
「師匠」
コソ、と話した僕の声は、前を歩く人間には聞こえていないらしい。
僕の前を歩くのは、近衛兵ではなく執事服を着た人間で、地下にある調理場付近の食材置き場でオリヴァさんが「この人がいつもの人です」と耳打ちしてから数分後、林檎を持ってついてくるように、と指示があり、コツコツ、と地下から上階にあがるための階段を、オリヴァの大切に育てた林檎を抱えて登っていく。
「極力、魔力を抑えたものに改良したつもりだったんですが……まだダメでしたね……」
『そんなことは無いですよ』
「けど……」
『現にギリギリまで近づかないと気づかれなかったのですから、十分に凄いですよ』
「……ありがとうございます」
師匠に褒められた、と喜ぶのも束の間『ですが……』と続い師匠の言葉に、直ぐに気持ちを切り替える。
『私たちからの通信は一旦、止めておいたほうが良さそうですね』
「……そうかも知れません」
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