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「いつものように、ですか。では、貴方様が【いつも】、【確実】に、お后様へ届けてくださっている、ということでしょうか?」
「だから、そう言って!!」
「おや、おや?おかしな話ですね」
んー?と首を傾げながら言う僕を見た男が、「は?」と気の抜けた声を出し、固まる。
「いえ、おかしな話だな、と思いまして。私の先生のところには、執事長のかたから、何度となく林檎の催促が送られてきているのです」
「……なっ」
「けれど、先生がお城へ林檎をお持ちしているのを、何度も見ておりますし、お后様のための特別な林檎も、もちろん、お持ちしています。貴方も今、【いつものように】、【林檎を持ってくればいい】と仰った。けれど、執事長は林檎が届かない、と言う」
「……へ、へえ」
つつ、と男の頬に、汗が流れた。
「お后様のための林檎が届かないから、その分の代金は支払えない。けれど、私の先生は林檎は届けている。と、なると、林檎は何処に消えているのでしょうねえ」
トン、トン、と林檎箱の蓋を軽く叩きながら言えば、男の額からの汗が、ひとつ、また、ひとつ、と増えてくる。
カタカタ、と震える男の手に、ふむ、とひとつの可能性が脳裏に浮かぶ。
「あの」
「どうなさったのです?」
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