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噎せ返りそうな薫りが、后が歩く度に広がっていく。
「待ちくたびれたぞ、妾の林檎よ」
にこり、と微笑む后の言葉に、「湊、完全にバレてんじゃん」とケビンがヒソ、と小さな声で僕に話しかける。
「別に構わないさ。僕たちは今回、彼女の機嫌を損ねるわけではないからね」
「へ?」
「それに、正直、今の状況ならお后様に直接会っておいたほうが話が早かったみたいだね」
「え?」
にっこり、とケビンに笑顔を向けながら答えればケビンは、ポカン、とした表情を浮かべ、キョロキョロと僕とお后様の顔を交互見つめた。
「やはり、貴方の言う通り、あの者は依存症の可能性が高いとのことでした」
「そうでしたか。彼はこれから治療を?」
「町外れの静かな診療所で治療も兼ねて休息をとり、心身ともに休めるように手配致しました」
「それはそれは」
コトリ、とカップを先に置いたのは、お城からやってきた執事長で、彼は、依頼主を真っ直ぐに見て、「オリヴァ殿」と彼の名を呼んだ。
「コチラの不徳の致すところとは言え、大変ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした」
「いえ、あの、そんな!」
「まだやるのか」
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