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「湊は魔法使って疲れてるだろ。ゆっくりで来ればいいよ!」
そう言って、ダッ、と物が山積みになっている室内を器用に避けながら、かなり早い速度でケビンは走り抜けていく。
本の中にいる間に魔法を使うと、外、要は現実世界にいる時よりも、確かに疲労は大きくなるが師匠ほどに魔力は使っていない。
依頼が続いたことで、師匠の体力はほぼ残っていないだろう。
早く休んでもらうためにも、早く師匠のところへ行かないと、と少し早歩きでケビン同様に室内を抜けていくと、前から走ってくる人影が見える。
「あ、ニルス」
「湊! おかえり!」
「わっ?!」
ダッ、と駆け寄ってきたニルスに、思い切り抱きつかれ、バランスを崩しそうになるものの、倒れるわけにもいかずググッと踏ん張る。
「おかえり! 湊! おかえり!」
「ニルス、あのですね…」
笑顔で抱きついてくるニルスは、僕よりも年下で、僕よりも身長も低い。ただ、年下、とは言ってもやっぱり年頃の女の子なので、こう、気軽に抱きつくというのは色々とマズイのでは、とニルスの肩を軽く掴んで僕から身体から離す。
「いつも言ってるけど、こういう事は気軽にしないほうが」
「何で?」
「いや、あの、僕は男で、ニルスは女の子だしね?」
「?」
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