第5話 閉錠

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 首を傾げながら、僕を見上げてくるニルスに、「ええと、だから、その」と言い出した僕がしどろもどろになる。 「(そう)、あたしは、湊なら」 「え、ちょ、ニル」 「湊」  グン、と一歩前に出て、僕の胸元の服を掴んだニルスの行動に頬が熱くなるのが分かる。  どうしよう、と割と本気で焦り始めた時、ダダダッ、とさっきと同様に走ってくる音が室内に響き、ニルスが「ちっ」と小さく舌打ちをした。 「くおら、ニルス! 何しようとしてんだコラァ」 「もう! イイトコだったのに!」 「ニルス、イイトコって」 「だって、湊、珍しく照れてくれたでしょ?」  ふふ、と離れることなく、ピタりとくっついたまま僕を見上げるニルスに、「いや、そりゃ、照れるでしょ」と必死に返せば、「やった」と喜んだニルスがぎゅ、と身体に腕を回してくる。 「いや、だからね? ニルスっ?!」 「おい、こら! ニルス! (そう)から離れろよ!」 「ヤダ! このまま湊を落とす!」 「いや、落とすってあの……!」  ニルスとケビンが言い合い、僕とニルスも押し問答をし、ニルスのアプローチに僕は顔が真っ赤になるけれど、一刻も早く師匠のところに行きたい僕は、ニルスの腕が緩んだ瞬間に、するっ、と腕から抜け出し、「ニルス! また後で!」と彼女に声をかけ全力で走り出す。     
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