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首を傾げながら、僕を見上げてくるニルスに、「ええと、だから、その」と言い出した僕がしどろもどろになる。
「湊、あたしは、湊なら」
「え、ちょ、ニル」
「湊」
グン、と一歩前に出て、僕の胸元の服を掴んだニルスの行動に頬が熱くなるのが分かる。
どうしよう、と割と本気で焦り始めた時、ダダダッ、とさっきと同様に走ってくる音が室内に響き、ニルスが「ちっ」と小さく舌打ちをした。
「くおら、ニルス! 何しようとしてんだコラァ」
「もう! イイトコだったのに!」
「ニルス、イイトコって」
「だって、湊、珍しく照れてくれたでしょ?」
ふふ、と離れることなく、ピタりとくっついたまま僕を見上げるニルスに、「いや、そりゃ、照れるでしょ」と必死に返せば、「やった」と喜んだニルスがぎゅ、と身体に腕を回してくる。
「いや、だからね? ニルスっ?!」
「おい、こら! ニルス! 湊から離れろよ!」
「ヤダ! このまま湊を落とす!」
「いや、落とすってあの……!」
ニルスとケビンが言い合い、僕とニルスも押し問答をし、ニルスのアプローチに僕は顔が真っ赤になるけれど、一刻も早く師匠のところに行きたい僕は、ニルスの腕が緩んだ瞬間に、するっ、と腕から抜け出し、「ニルス! また後で!」と彼女に声をかけ全力で走り出す。
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