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第6話 真っ赤なインク
いつもなら走らないように、と二人に注意する側なのだが、ニルスのところからダダダッと全力で室内を走り、目的の人のところへと向かえば、その人は前方からゆっくりと歩いてこちらへ向かっている。
「師匠! 扉は閉めましたよ?」
てっきり、扉を閉めにきたのかと思い声をかければ、「有難うございます」と師匠はにこりと笑う。
「もしかして、何かありましたか?! 具合が悪いとかっ」
心なしか頬が出発前よりも痩けている気がする。
まさか何かトラブルがあったのでは、と焦った僕を見て、師匠は「大丈夫」と優しく微笑む。
「私にも、外にも何も起きていないです」
「……良かった」
はあ、と安堵の息をつくものの、それならなぜ、疲れているはずの師匠が扉の部屋に向かって歩いていたのだろう。そう考え首をかしげた僕に、師匠が「まったく君は」と言ってほんの少し小さく息をはく。
「私の心配ばかりして。閉錠も魔力を必要とします。外に出てきたばかりで、湊君も疲れたでしょうに」
何やら僕を心配そうに見る師匠こそ、僕が本の中に入る前に比べて、だいぶ辛そうに見える。
「僕なんか全然、それよりも師匠、少し頬が」
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