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「お待たせしました。ええと、貴方は……」
子どもの声を聞き、走ってきてくれたのであろう。
彼の額にはじんわりと汗が滲んでいて、首にかけていたタオルで、汗を拭った彼は、首を傾げながら突然の来訪者である僕に問いかける。
「オリヴァさん、でいらっしゃいますか?」
「えぇ、オリヴァは自分ですが……」
「良かった。申し遅れました。ワタクシ、ご依頼を頂きました、修復屋リコルヌから参りました、湊と申します」
「リコ……? ソウ……?」
そう言って、ケースから取り出した名刺に書かれた文字を見て、彼は「licorne/Einhorn」と書かれた文字を見て「あぁ!あんた、一角獣さんの!」とバッと顔をあげて僕を見る。
「本の修理に、参りました」
にこり、と笑いかけた僕に、依頼主は「本当に来てくれるんですね……!」と目尻にタオルをあてながら、答えた。
『湊君、辿り着きましたか?』
「あ、はい。今、依頼主のかたとお会いしました」
『それは良かった。では、このまま回線は繋いでおいてくださいね』
「了解です」
片耳に装着している機器から聞こえるのは、外の世界で待っている師匠で、声は障害などで途切れることもなく、小さく安堵の息を吐く。
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