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「ソウさん、どうぞ、入ってください。散らかってますけど。あちらにおかけください」
「お気になさらずに。お邪魔します」
依頼主のオリヴァさんに案内され建物に入るものの、顔を合わせてからずっと、じーっと僕を見続けている視線が気になり、ちらり、とそちらを見れば、バッ、と少年がテーブルの下へと隠れる。
「お父さんはお話があるから、お母さんのお手伝いに行ってきておくれ」
「でも、この人、見たこと無い人だよ!お父さんのこと、またいじめたりするかもしれない!」
傍にきた父親に、そう言って抱きついた少年は僕の事を指差しながら言い、その声に思わず「ハハ……」と小さく乾いた笑いを零せば、父親は息子と視線を合わせながら、口を開く。
「このお兄さんは、お父さんを虐めたりしない。それよりも、こうしている間にも、お母さんが大変かもしれない。お母さんのお手伝いをしてあげてくれないか?」
優しく頭を撫でながら言う父親の言葉に、少年は「……わかった!」と力強く頷いて今来た道を駆け足で戻っていく。
その背を見送った依頼主は、ポットを載せていたトレーを持って「すみません、お待たせしてしまって」と謝りながら腰をおろした。
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