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「では……改めて自己紹介をさせて頂きます。修復屋リコルヌから参りました、湊と申します。ご依頼を頂いた、林檎の件で参りました。オリヴァさん、でお間違えないですね?」
「ああ、はい。間違いないです」
ああ、良かった……と大きく息の吐く彼に「あの」と声をかける。
「安心するのは、全てを終えてからのほうが良いかと思います」
「あああ、すみません……!」
「あ、いえ、ご依頼は必ず成功させるのですが、時間がかかることもありますので」
「そう、なんですか?」
「ええ」
ウチに来る依頼は、依頼主にとっても、僕にとっても、絶対に成功をさせなければならないこと。外部からやってきた僕達にとっては、依頼の成功は、当人達よりも、もっと死活問題でもある。
「あっちに戻れないとか、嫌ですし」
「……ソウさん?」
ぼそり、と呟いた僕の言葉に、オリヴァさんが不思議そうな顔をしながら首を傾げる。
『大丈夫ですよ、湊君は優秀ですから』
「師匠……」
耳元で聞こえる師匠の少し低く、優しい言葉に、じいん、と1人感動をしていれば『湊、ケビンが待ってる』ともう1人の声が割り込んで聞こえてくる。
「あれ、ケビン、前のところ、終わったの?」
小さな声で反応をした僕に『予定よりも手間取ったけど』とマイク越しに聞こえてくる呆れたような声は、僕と同様に師匠の店で働く同僚のニルス。
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