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もう1人、僕と同じように本の修復を担当するケビン、という青年も居るのだが、ニルスはどうもケビンには手厳しい気がする。
また、眉間に皺でも寄せているのだろう、とニルスの表情を想像し、小さく苦笑いを零す。
『まぁまぁ、ニルス君も、そんな意地悪を言わないで。湊君、続きを聞けますか?』
「あ、はい!」
疑問符を抱えながら僕を見ているオリヴァさんに向き直りながら、にこり、と笑顔を浮かべて、僕はノートを開いた。
「なんでですかね」
『そうですね。まぁ、幾つかの理由は考えられますが……湊君、見えてきましたか?』
「あー……、はい。すっごい大きいです。お城」
この町とお城が見渡せるという小高い丘へとやってきたものの、そこから見る限りでも、この町のお城は随分と大きい。
「はあー、あそこにお后様がいらっしゃる、と……」
『そのようですね。ニルス君、場所はこのあたりで問題ないですか?』
『うん。このあたり』
『では、湊君、いつものもの、送りますね』
「お願いします」
少しだけ開けたこの小高い場所は、部外者である僕やケビン以外には、あとにも先にも此処に来る人物は居ない。
持ち物の一つの、小さめな本をぱか、と開いた瞬間、目の前に出てくるのは、1つの小さな家。
そして僕は、その家の扉を迷うことなく開けて、中に入った。
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