ひらりとひかり。

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その日から月日は少しずつ流れていって、私のリボンは緑色になった。因みにひかり先輩のネクタイは青色だ。 あれから、私は会う度、会う度、ひかり先輩に好きを伝えて。手作り弁当を作ってみたり、試験前は勉強を見てもらったり。 そして…時に切なそうに揺れるひかり先輩の隣りにただ座っていたのだが、篠田先生は昨年度の終業式で寿退職した。今は、新しい養護教諭の先生が保健室で待機している。 「………。」 タタタタタッ。 私は、ステップを踏むように走り出すと、三年生の下駄箱で靴を履き替える先輩に並んだ。 「ひかり先輩!」 「何だよ。」 「泣いてもいいんですよ。」 「…バカなの?」 「私の胸でどーん!と泣いてくださっ!」 両腕を広げて迎え入れる準備は万端だったのに、本日二度目のデコピンをくらってしまった。 「しぇ、しぇんぱ~い。」 「何だよ。まだ何かあんの?」 「ひかり先輩!好きです!付き合ってください!」 「………。」 (………。あれ?いつもの「バカなの?」「飽きないの?」「阿呆だな」の返しがこない?) 若しかして、しつこくし過ぎて呆れられてしまったのでは…そんな不安が今更、過ぎった時だ。ひかり先輩のしなやかな指先が私の緑色のリボンに触れた。
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