ひらりとひかり。

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出逢いは去年の入学式。高校生活初日から遅刻しそうになっていた私は、もつれる足でこの桜並木の坂道を走っていた。 「!、あっ!わわわわわっ!」 元々、運動は苦手である。中学の頃の成績は五段階中、一だった。三年間、ずーっと。故に、もつれる足は当然のように絡まり、両腕を広げてバランスをとろうとするも虚しく。私の体は後ろへ倒れた。 「!」 「!、あ…っぶね。」 「………。」 倒れたのだ。倒れた、はずだった。真後ろにいた男の人の胸に頭がとすん。私の上半身を支えてくれたのが、そう、ひかり先輩だった。 「あ、有り難う御座います。」 「赤リボン…ってことは一年?」 「あ、は、はい。」 ひかり先輩がゆっくりと、私の体勢を元に戻してくれる。振り向いて、胸元のネクタイの色を確認すると緑色…二年生だと知った。 「す、すみません。ご迷惑をおかけしました。で、では!急ぐので!」 ベシャッ! 頭を深く下げて、ひかり先輩に背中を向けた瞬間だ。私は派手に転んだ。 (痛ったた…鼻、鼻うった。) と、その時だ。数メートル先に見える校舎から、予鈴の音が鳴り響くのが聞こえたので。私はゆらり、ジンジンする膝を伸ばして立ち上がった。すると、 (え!?) それは一瞬の出来事だった。まだ名前も知らないひかり先輩が、私をお姫様抱っこして坂道を登り始める。
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