ひらりとひかり。

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「あ!あの!すみません、私、大丈夫です!」 「何が大丈夫なんだよ。膝、血でてんじゃん。鼻も擦り剥いてる。」 なんてことはない。そう言うように颯爽と私を抱えて足を運ぶひかり先輩。「鼻も擦り剥いてる。」私は、その言葉に思わず羞恥して。熱くなる頬、今更に両手で鼻を覆った。 顔半分を隠して、下がる眉。チラリ、視線をひかり先輩へ向けると汗がキラリ…ひとつ頬を伝うのが見えた。 その瞬間だ。 春の荒れ狂うような風も、葉桜になってしまって舞う花びらも、周りの冷やかしの声も。全て、全て、世界は二十四色パレットのように色づいた。 これが、私の恋の始まり。 (う~っ、どうしよう~。めっちゃ恥ずかしい。てか迷惑かけちゃってるよー。) ドキン…ドキンッ、ドキンッ!って鳴る煩い鼓動、心がぶつぶつと独り言を呟いていると、あっという間にある部屋の前まで来て、ひかり先輩は足を止めた。 「麻友(まゆ)!扉、開けて。でっかい荷物で手塞がってる。」 (『でっかい荷物』…。) 仕方がない。けれど、地味に傷ついた一瞬である。その時、 「もうっ!やっぱり生田くんだ。篠田(しのだ)先生でしょう?君は何度言えばわかるの?」 「いーじゃん、別に。」 「良くありません。後、目上の人にたいして敬語を遣わないところも直しなさい。」 扉から出てきたのは、白衣を纏う背の小さな可愛らしい女性…篠田先生と言うらしい。同時に、消毒液独特の匂いが流れてきて、ここが保健室であると察した。
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