14人が本棚に入れています
本棚に追加
私は傷口を洗い、言われた通りガーゼを当てて。ひょこひょことひかり先輩の横たわるベッドまでやって来た。
「あの、有り難う御座います。すみません…入学式。」
「別に。俺、新入生じゃないし。あんたは?大丈夫なの?」
「あ、ははは。しょうがないです。」
苦笑がもれる。本当は、新しい制服に袖を通して教室の扉をくぐることを楽しみにしていた。…なのに、今ではこんな姿だ。
「あの。」
「ん?」
「名前…訊いてもいいですか?」
「ああ、俺?生田ひかり。」
「ひかり…。」
「女っぽい名前だろ。だから名字で「私たち似てますね!」
「…は?」
「だって、ひかりとひらり。一字違いです!偶然、助けられて。偶然、名前も似てて。これはもう運命です!」
「いや、無理矢理だろ。」
「これから宜しくお願いします。ひかり先輩。」
「人の話聞いてた?名字で「ところで、ひかり先輩!」
(…聞いてねぇな。)
「ひかり先輩、彼女さんはいるんですか?」
「何、唐突に。いないよ。」
「じゃあ、好きな人…は。」
「………。」
訊ねることが、野暮だと思った。ひかり先輩の瞳が、切なげにキラキラと揺れている。
最初のコメントを投稿しよう!