サクラを手紙に閉じ込めまして、

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　拝啓、まだ見ぬおかーちゃん様。
　今回の手紙で二百五十六通目となりますが、いかがお過ごしでしょうか。全部の手紙とはいかずとも、せめて一通や二通は届いておりますことを、あなたの息子は心より期待しております。
　俺たち三人は相変わらですが、昨日ジーンが「ハナミ」をしたいと言いだしました。資料室で本ばかり読んでいるジーンは、俺たちが知らない言葉を数多く知っています。最近だと「ホッサマグナ」という単語を教えてもらいました。ホッサマグナ、柔らかいホから始まり、気性の悪いナで終わる。
　ホッサァマグナ、ホッサマグゥナ、ホォッサマグゥナ。ホッサマグナの正しい発音は、どれでしょうか。一番目が俺、二番目はナァナ、三番目はジーンの発音提案です。
　ホッサマグナをたったひとつの会話方法とするホッサマグナゲームが一週間、孤島で流行りました。ホッサマグナ、意味は知りません。ジーンが調べようとしても、この単語に関する資料の紙は、治りかけのカサブタから剥がれる汚い皮膚のように、ざらざらと崩れ落ちてしまったそうです。ホッサマグナの単語だけが、資料の隅に残って無事でした。