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薔薇の匂いがする単語だと、ナァナが鼻をヒクつかせていました。薔薇なんて嗅いだこと無いのに。俺たちが嗅いだことのある花の香りなんて蓮だけです。孤島の一階にある植物園では、蓮が年中咲き乱れています。蓮の香りは三人とも嫌いです。瑞々しくて、ねっとりと絡みついてきて、蓮の香りを嗅いだ夜は悪夢を見やすいのです。
さて、「ハナミ」です。「ジャパン」という国でのイベントで、ピンク色の花の下に何人かで集まり食事をするそうです。
朝食用の錠剤五粒を、三人しかいないのにやけに広すぎる食堂で飲み終えてから、さっそく「ハナミ」をすることにしました。
担当は以下のとおりです。
俺:食事準備。
ジーン:ピンク色の花を準備。
ナァナ:髪の毛をピンクに染める。
ナァナだけ仕事をしていないと非難すれば、手に噛みつかれました。
今までの手紙でも何度か説明しましたが、ナァナは孤島でただ一人のメスです。
俺はいつも白シャツに青いズボンの恰好。ジーンも同じですが、その上から白衣を着ています。ナァナだけ、毎日違う服を着ます。孤島の倉庫にある大量の布を縫ったり貼ったり、刻んだり、丸形菱形四角を違う布と組み合わせたり、一日中服作りをしています。
八十七通目と百二十一通目にも書きましたが、彼女は髪型だけではなく髪の色も毎日変えます。その日の気分に合わせて、黄色青赤緑、一番すごかったのは虹色。その日は紫色の髪。二つのお団子ヘアーから三つ編みが飛び出ていました。
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