イケメン故郷に帰る

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イケメン故郷に帰る

 親しくしている礼二が故郷の熊本に帰るそうです。  彼は飲食代の不良売り掛けを取り立てる仕事をしていますが、カード払いが増えたことでその仕事がぐんと減ってしまったのです。    スカウトマンの黒田君と三人で送別会をしました。  居酒屋で礼二は、 「俺、向こうでヘルパーやるんですよ。言わなかったけど、実家が老人ホームやってるんで」  資格も取ったそうです。 「俺、おまえが老人の入れ歯洗ったり、おむつ交換してるの想像できないわ」  私も黒田君と同感です。  実は礼二は、ほれぼれとする長身のイケメンで、ホストクラブ大好きのママ連中に、 「あんなのがホストクラブにいたら、ピンドンでシャンパンタワーやっちゃうわね」  と言わしめるほどなのです。  礼二は、家業を継ぐに至った決意を話してくれました。 「俺、地元じゃ手のつけられない悪ガキで、少年院に送られそうになったこともあるんですよ」  飲食代を支払わないお客の会社に乗り込んで、会議中だろうが構わず取り立てる礼二の片鱗がうかがえます。    母親に手を挙げたこともあるそうで、 「母親を泣かすのはこの世で一番いけないことなんですよね。リリー・フランキーの『東京タワー』に書いてありましたよ」  何はともあれ、親孝行をしたい、という決意は立派です。 「熊本のおばあちゃん達、あなたに介護されたら寿命延びるんじゃない? いいなあ、私も礼二に介護されたい」  半ば本音です。 「じゃあ老後は熊本に来て下さいよ。別格でケアしますから」  深夜まで飲んで解散すると、礼二と黒田君はタクシーに乗り込みました。もう一軒行くそうです。  二人は大の仲良しで礼二を紹介してくれたのは黒田君です。     ママやホステスと同じで、男性スタッフも時期がくれば銀座から消えて行きます。  当たり前ですがとてもさみしいです。        
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