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県民性
東京の人口の7割は地方出身者だそうですが、うなずける話です。
当店の女性達もほとんど地方出身者です。
こうしたお店をやらせていただいているおかげで、全国のお客様とお会いすることができます。
それぞれ県民性があると思いますが、わかりやすいのは九州です。特に福岡は顕著です。
同郷者に向けた面倒見の良さと言ったらリスペクトものです。
当店には来春就職を控えた、亜香里という名前の大学生がいるのですが、その彼女が怒りを溜めた顔で、
「ママ、すみません。今週いっぱいでやめさせて下さい」
と言って来ました。
「どうしたの? 卒業までいてくれるんじゃなかったの?」
喫茶室に連れ出して話を聞くと、
「そのつもりだったんですけど、古賀さんがイヤで…」
古賀さんとは建築解体会社の専務で、亜香里と同じ福岡県のご出身です。
同郷ということで古賀さんは何かと亜香里の世話を焼き可愛がって下さるのですが、彼女はうざくてたまらないようです。
少し前も彼女は憤慨していました。
執拗に知りたがるので、就職の内定先を教えたところ、
「そげな会社に就職してどげんするんだ、そこできさんはどげんしたいんか」
と博多弁でまくしたてられたそうです。
亜香里が内定をもらったゲーム会社は熱望していた企業です。
「同郷だからって、なんであそこまで言われなきゃいけないんですか。親でもないのに…」
彼女は、怒りと悔しさで顔を真っ赤にしていました。
他にも、
「学生が肩出したドレスば着るんじゃなか」
とか、
「銀座でアルバイトをしているのを親は知っとるのか?」
とか、それはうるさかったそうです。
亜香里の気持ちもわかるので、引き留めませんでした。
「なんでやめたんだ? 他の店に移ったのか?」
古賀さんには執拗に聞かれました。
知り合いの店に紹介したのですが、教えるわけにはいきません。
たまたまだと思いますが本当に残念なケースでした。
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