深イイ話

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深イイ話

 コンサルティング会社の代表が女性達をからかっています。 「おまえ達、昼も夜も働いてそんなに稼いでどうするんだ? 男に貢いでいるのか?」 「とんでもないですよ!」  童顔の菜摘が言い返しました。「食べるだけでいっぱいいっぱいですよ。来月なんかいとこの結婚式があって出費もかさむし…」   「私は留学したいから貯金してます」  桃子は通訳を目指しています。 「おまえはどうだ? 歳の割りにはしっかりしてそうだけど」  代表は25才の見るからにおとなしそうな美咲にふりました。 「私は、貯金はそんなにないけど夢はあります」  あれれ?  普段あまり自分の事を話さない美咲が答えました。  みんな注目します。 「夢って何だ?」 「家を買いたいです」 「家? それじゃこんな時給の安い店にいないで高級クラブに移らないと。紹介してやろうか?」  本当にこの代表は口が悪いのみならず一言も二言も多くて困ります。 「家と言っても子供の頃に住んでいた家ですけど…買い戻したいんです」    スマホの写メで見せてくれた木造の家屋はこう言っては失礼ですが、かなりの安普請です。 「…家族でこの家に住んでた時が一番幸せだったので…」 「それで、どうやって取り戻すんだ? 人が住んでるみたいだけど」  狭い庭に洗濯物を干すロープが張られ、衣類が干されています。 「大丈夫よ、美咲ちゃん」  じっと話に耳を傾けていためぐみが口を挟みました。 「その夢、必ず叶うから。子供の頃からずうっと願って来たんでしょう? 強く願えば宇宙が総力をあげて必ず叶えてくれるのよ」 「宇宙? そりゃ何だい?」  代表を無視してめぐみは続けます。 「だって私にも奇跡が起きたんだから」  幼少の頃、父親と生き別れためぐみは、 (神様、どうかお父さんに会わせて下さい)  と子供の頃からずうっと念じ続けて来たそうです。  すると三年前、区役所から連絡があって病床にあった父親と再会する事が出来たそうです。  どちらかと言えば、人の噂や芸能ネタが好きなめぐみが真剣な表情で語っています。  聞き入ってしまいました。  私も事情があって実兄に10年以上会えていません。  強く願えば、宇宙が総力をあげて叶えてくれる…。  信じたいです。  
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