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お別れの日
猫神様の言うとおり、タマのご主人の供養は今日、慰霊碑が置いてあるお寺で行われる事になっていた。
思えばこの辺りはこのお寺くらいしかないし、昨日私達と入れ違いで家族が遺骨を持ってきたのか、今日になってタマが「ご主人の気配がする」と言っていた。
私は初めは、ご家族が来たら磨いた首輪を直接渡すつもりだった。
けれど、どう考えても私がタマの首輪を持っている理由を説明できそうになかった。
私はこっそりお寺の関係者以外立ち入り禁止という所から忍び込み、お寺にご家族が揃ったところで、わざとチリン、と音を立てて首輪を置いた。
その音に敏感だったのは小学生くらいの子供で、首輪にすぐ気が付いた。
「ママ、タマの首輪!」
子供は、すぐに床に置かれた首輪を母親のところに持って行った。
「これ、パパがタマに買ってあげた首輪じゃない…!震災で無くなったと思ってたのに…!」
母親は首輪を見て驚いていた。
「今日はタマも来てくれたのね。」
母親は涙ぐんで喜んでいた。
タマの首輪がどうなったか、正直な所わからない。
タマには言わなかったが、恐らくお墓には入れられていないだろう。
私とタマは納骨の様子を遠くから見ていた。
タマは終始、「ご主人、ご主人。」と泣いていた。
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