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とはいえ、既に整地されてしまったこの土地に、タマの望む物がある確率は低かった。
そういえば、この近くのお寺に震災の慰霊碑がある事を思い出した。
もしかしたら、そこなら何かあるかもしれない。
私はタマを連れて、そのお寺にを訪ねる事にした。
道中、まだ片付けきれていない船の一部と思われる部品を多く目にした。
…この辺まで水が来たんだ。
私は、震災の爪痕を再確認していた。
お寺では、残念ながら収穫がなかった。
恐らくタマのご主人の名前が慰霊碑に刻まれていると思われたが、タマは「ご主人」としかわからないという。
名前が分かれば何かしら追えると思ったが…。
お寺の近くにも色々なものが流されて来たというが、もう何年か経っていたことから、大抵の物は処分されてしまっていた。
タマにご家族の住所を聞いたが、今はもう引っ越してしまって、タマが避難で一時的に暮らしていた家ももうなかったという。
ネコマタになったタマは、ずっとご主人の家があった場所から離れようとしなかったらしい。
そんなタマを見ていた妖怪が、ご主人が無事見付かって、納骨のためにご家族がまたこの地に来ることを教えてくれた、というのが事の経緯だという。
良い妖怪もいる物だと、私は感心して聞いていた。
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