眠れぬ一夜

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僕がベットの中に潜り込んだのは夜の9時過ぎだった。明日は出張。早く起きなければならない。 目覚ましはセットした。明日の準備は万端。戸締まり、火の元は確認した。大丈夫、心配はない。 ……。眠れない。じっとして体は指ひとつ動かしていない。けれども、眠れない。今、僕は仰向けだ。横になってみようか。いや、だめだ。きっときっと、起きてしまう。このまま、このまま……。でも、眠れない。 ……。眠れない。そうだ。数字をかぞえてみよう。羊が一匹みたいな感じだ。百までには、眠っているだろう。いち、に、さん、し、ご…………。きゅうじゅうはち、きゅうじゅうきゅ、ひゃく。……。眠れない。 ……。眠れない。何も考えない。頭の中をからっぽのするんだ。私は木、私は木、私は木……。私は木って考えてるじゃないか。ちがう、そうじゃない。無心になって…………。明日は電車に乗って……。いかん、いかん。寝ないと。無心になって…………。そうえば、あいつに伝えておくことが。あっ、寝ないと。だめだ。何か考えてしまう。眠れない。 ……。眠れない。寝たい、寝たい、寝たい、寝たい。眠い、眠い、眠い、寝る、寝る。ピピピピピピピピピ。うるさいっ。僕が、目を開けると、目覚まし時計に手が届く。無意識のうちに目覚まし時計を止めたのか。目覚まし時計の時間を見る。あと30分で出発しなればいけない。僕は、ゆっくりとベットから起き上がると一言呟く。  疲れた。
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