バンビさんとメリーくん。

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「違っ──」 「──違うって言わないでぇ」  ほんとにこの子はずるい後輩くんです。 私はメリーくんの手をひっぱがして、絵の具の用意をし出します。  先輩はいなくなるものです。 私も二回、その経験をしています。 「……文化祭まで」  エプロンを結んでいたメリーくんが私の隣に来ました。 「……文化祭まで、保留っ」  今はまだ答えが出ません。 なので考える時間が欲しいのです。 「えー……あ、まだ振られてないやぁ、ひゃっほぅ」  いえーい、とメリーくんは喜びます。 そして調子に乗った彼は私を後ろから抱き締めると、こう囁きます。 「──文化祭終わったら、由芽(ゆめ)ちゃんって呼んでいいですかぁ? あと俺も希(のぞむ)って呼んでくださぁい」
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