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「原口?もう寝たのか?」
細い指が、僕の髪を撫でている。
「なぁ、ホントに寝たのか?」
ぽわんとした感覚の中で、正幸の声が聞こえる。
「原口、俺もだぞ。俺も、原口の事、好きだぞ。」
抱き締める腕に、すりすりと頬を擦り寄せて、顔を上げるとチュッと口元にキスした。
「へへっ。」
照れた笑いが可愛い。
正幸からキスされるなんて、初めてだ!
なんて自分に都合のいい夢だろう。
いや、夢とはそういうものか?
「…ろう。……よしろ…佳郎。
ーーーダメ、ムリだ!
名前呼びはまだムリだぁ…
いつかは…呼べるのかな。」
コツンとおでこを僕の胸にあずけて、消えそうな声で言った。
「原口、愛してるよ。俺、もっともっと、お前と触れ合いたい。
キスだって、たくさんしたい。
お前は?どう思ってるの?
寝てるもん、答える筈ないよな。
おやすみ、明日、楽しみにしてる。
ごめんな、いつも素直に言えなくて。」
正幸は、もう一度さっきよりも長く、触れるだけのキスをして目を閉じた。
しばらくすると、すぅすぅと静かな寝息が聞こえてくる。
ずっとドキドキしていた。
これは夢なんかじゃないって気付いてから、僕はずっと息をひそめて、寝たふりをし続けた。
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