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寝室の引き出しから香織は1枚の紙を出した。
夫には言っていなかったが香織は妊娠てきるかどうかの検査を受けていたのだ。
特に問題は無かったが年齢的にも早く取りかかった方がいいと言われていたことを、いつ夫に告げようかと考えていた矢先の出来事だったのだ
「私だって。私だって子ども欲しかったのに」
夫の前では結局言えなかった一言を吐き出した。
彼の前でこれ以上、惨めな気持ちになりたくなかったのだ。私は子どもなんていらなかったと、そういう態度でいたかったから。
香織は目を閉じて明日の朝のことを、もう一度シュミレーションしてみた。
朝起きて、いつものように夫に声を掛ける。
反応しない彼を揺らしながら大声で名前を呼んだ後にスマホから119に電話をするのねと実際に声に出してみた。
「主人の様子がおかしいので、すぐに来てください」
「昨日の夜は11時頃におやすみなさいと声を掛けました。返事は無かったんですが、それもよくあることなんで。もしかして、あのときにはもう?」
そう言って、ここで涙を流すと良いのだろうか。
間違っても救急車を呼ぶときに主人が死んでるんですなんて言わないようにしなければ。
大丈夫。インターネットで調べた取って置きの方法なんで絶対に見つからないはず。
それにしても夫と検索しただけで、あんなに色々な方法が出てくるとは。
ベッドに入り、もう一度夫に向かっておやすみなさいと呟いた。
「ねぇ、聞いてる?」
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