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それから子どもの頃の話を中心にたわいもない話をして、時間は過ぎていく。
離婚してからまともに人と話してなかった優美は、久しぶりに心から笑うとこができた。
二人がようやく帰ろうかという話になったのは、11時を少し過ぎたあたりだった。
「こんなにお酒飲んだの久々かも。ちょっと前までこの時間はもう、息子と寝てたから」
「そっか・・・」
「そうだ、お会計・・・」
「ん?大丈夫だよ。帰ろう?」
「え?何が大丈夫なの?払ってないよね?」
優美が不思議そうにしてると、
「優美先輩、大丈夫ですよ!こいつからバッチリ多めに払ってもらったんで!」
と、横から重晴が口を挟む。
どうやら優美がトイレに立った隙に、支払いを済ませたようだった。
「え?!いつの間に!ってか、なにそれ!大斗のくせにナマイキー」
「俺だって立派な男だからね。それぐらいできるよ」
「でもご馳走になるわけにはいかないよ!こーゆのはほら、彼女とかにしてあげて?」
「ははは、彼女なんていないから気にしなくていいよ。ニートは大人しく奢られてなさい」
「でも・・・」
「え!優美先輩、今、ニートなんですか?!」
5歳も年下の男の子に奢られるなんてなんだか気が引けて困っていると、そんな二人の様子なんてお構い無しに、重晴が大きな声で割り込んでくる。
「何いきなり・・・恥ずかしいけど、そうだよ」
「じゃあ、ここで働きませんか?ちょうどバイト募集してるんですよ!」
急な申し出にどう反応していいか分からずに戸惑っていると、
「いいんじゃない?優美ちゃん、昔、アニキと居酒屋でバイトしてたじゃん」
と、大斗も声を合わせて勧めてくる。
確かに仕事は探さないといけないと思っていたし、家にいるよりはいいかなと優美も二人の勢いに押されて、結局その場で翌日から働くことになった。
(まぁ、こんな新しい一歩もアリかな?)
新しい一歩のはずなのに、子どもの頃から知っているメンバーに囲まれてて何だか懐かしい。
自分はここから頑張るしかないんだな、と優美は覚悟を決めた。
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