君と、つづく微熱

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ハーイ! イッポーン! ナイッサー! いいよいいよー! イッポーン!  館内に反響して、通る声が響く。  安藤紗希は今年入学してバドミントン部に入ったばかり。  高校は近さと偏差値で選んだのだけれど、その高校はたまたま県内でも有数と言われるバトミントンの強豪校で、もともと腕に覚えのあった紗希は迷うことなく入部を決めた。それから進学校らしい課題の山に追われながら、紗希はバトミントン漬けの日々を送っている。  指導は鬼コーチとして有名な毬栗(いがぐり)頭の柴田。その指導の激しさたるや、隣町の高校にも噂が及ぶほどで 「そこ! 脇をもっと占めて!」 「ヒットが低い!」 「手を抜くなー! わかるぞー!」  しっかりとしたアップの後、館内を走るウォーミングアップをして息をつく間もなく激しいラリー、そしてサーブ練習に入るのだが一瞬でも気を抜くと直ぐに怒号が飛ぶ。そんな事をしているものだから、高校デビューで覚えたチェリーピンクのリップはあっという間に汗で取れていく。それでも、紗希は大好きなバドミントン部に入れて幸せだった。
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