第1章

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俺は嫌われもの、今7~8歳のガキに追われて部屋の隅を全速力で駆けている。 チョット前までは同じように嫌われものだったが、道路の真ん中を仲間達と共に傍若無人に走り回っていたのに。 あの頃の俺は怖いものなんて無かった。 それが何でこうなってしまったのか、今も忘れないあの時の事は。 あの晩も俺と仲間達は、アクセルを全開にしてマフラーから不快な音を撒き散らし、蛇行運転しながら暴走していた。 撒き散らされる大音響に驚いた犬が、仲間のバイクの前に飛び出し撥ね飛ばされる。 撥ね飛ばされ道路に叩き付けられた犬から魂が飛び出しその魂が俺に激突、その衝撃で俺の魂が俺の身体から飛び出て道路の片隅にいたゴキブリの身体に激突してゴキブリの魂を何処かに弾き飛ばし、俺の魂はゴキブリの中に留まった。 ゴキブリの魂が何処に行ったかなんて分からんけど、犬の魂の行方は分かる。 俺の身体に留まっていた。 そう、魂が玉突きを行い、犬の魂が俺の身体に入り、俺の魂がゴキブリの中に入ったって訳。 元の身体に戻る術を知らない俺は、それからゴキブリとして生きている。 早く冷蔵庫の下に逃げ込まなければ、ガキが持つ新聞紙に叩き潰される前に。
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