倉田さん

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翌朝、朝食のトーストをよばれながら倉田さんに報告をした。 「うーん、ずっと太田さんに手を置いてもらうわけにはいかないですしどうしましょう……?」 その答えなら俺はひとつだけ思いついている。 「倉田さんの部屋って水枕あります?あの自分で氷とか水とかいれるやつなんですけど」 「えぇ、ありますけど……。そんなのどうするんですか?」 「人肌より少し熱めのお湯を水枕にいれて寝ればもしかしたら、と思いまして」 「なるほど!今夜やってみます」 解決案も仮採用され、朝食も終えたところで俺は自分の部屋に戻った。 仕事の準備をすると、あわよくばお湯枕作戦が失敗する事を祈りながら職場へ向かった。 そして夜、俺は布団に入ると壁に耳をくっつけてみた。 歯ぎしりと暴言を今か今かと待っていた。しかしどちらも聞こえず、俺は寝てしまった。 翌朝、部屋から出ると倉田さんとばったり会った。 「あ、太田さん!太田さんのおかげでよく寝れた気がします。歯ぎしりとか聞こえなかったですか?」 「大丈夫でしたよ。良かったですね」 俺はがっかりしたのを悟られないように、明るく話した。 「良かったぁ、寝る時の悪癖も消えて」 「えぇ、本当に。俺は仕事があるのでまた」 「はぁい、お仕事頑張ってくださーい」 俺は倉田さんに見送られながら、肩を落として職場へ向かった。 あーぁ、まだ解決しなければ夜に倉田さんの部屋に行けたのに……。 この後俺はこのアパートに入居し、その数日後に倉田さんが出ていってしまったため、芽生えそうだったラブロマンスは種のまんま枯れてしまった……。
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