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「ではさっそく大家さんから話を聞きましょう」
俺が口を開こうとすると彼はそう言って101号室の前まで歩く。
「大家さーん、開けますよー」
従業員はインターホンも押さなければ返事も待たずに玄関を開け、女性の派手な嬌声が聞こえてくる。
え?大家さんいくつ?てかこんな昼間から!?
「馬鹿者ー!インターホン押せ!」
俺があれやこれやと妄想を膨らませていると、中年男性の怒鳴り声が聞こえてきて女性の嬌声が止まった。
そしてよく50代と思われる中年男性が不機嫌そうに出てきた。
「まったく、これだからゆとりは……」
中年男性は従業員をヒト睨みすると、俺に営業スマイルを向けてくる。
「うちの部屋を借りたいというのは君かね?うむ、実に誠実そうな青年だ」
……なんとなくこの人の薄っぺらさが分かった気がした。
「ど、どうも……。太田弘樹と申します」
「おぉ、そうかそうか。わしゃこのアパートで大家をしている大山敏行だ。少しまっとれ」
大山さんは部屋に戻ると、物音を立てた。
「ささ、どうぞおあがりくだされ」
大山さんは顔だけ出して行った。
「お邪魔します……」
少し躊躇いながらも部屋に入る。
「うっ……」
入って早々イカ臭い……。
「適当に寛いで待っててもらえるかの?」
大山さんはそう言って台所へ行く。
「ね、見てくださいよ、アレ……」
従業員は小声で言いながら、テレビ台代わりのカラーボックスを指さした。
「うわ……」
そこにはAVがぎっしり詰まっている。女優は女子校生ものから熟女まで。ジャンルも様々だ……。
「大山さん、暇さえあればあーいうの見てるんですよ……」
ここで部屋を借りていいものかどうか不安になってきた……。
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