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インターホンを押すとのんびりした可愛らしい返事が聞こえ、少しの間があってから玄関が開いた。食欲をそそる甘いにおいがする。
「はぁい、どちら様でしょう?」
出てきたのは低身長の癒し系美人。童顔にグラマラスボディとアンバランスな女性だ。
「お試しで今日から3日間隣の部屋に泊まることになった太田弘樹です。もしかしたら住むことになるかもしれませんのでよろしくお願いします」
俺は挨拶をして菓子折りを渡した。
「これはこれはご丁寧にどうも。隣人なんて久しぶりです」
倉田さんはどこか楽しそうに菓子折りを受け取る。
「良かったらお茶していきませんか?ちょうどマドレーヌが焼きあがったところなんですよ」
「ではお言葉に甘えて」
部屋に入るとあちこち可愛い小物やぬいぐるみが置いてあったりして、女の子らしい空間が広がっていた。
「少し待っててくださいね」
倉田さんは俺をテーブルの前に座らせると、手際よく紅茶とマドレーヌを用意してテーブルに置いた。
美味しいマドレーヌと紅茶をご馳走になりながら小一時間ほど彼女と話したが、何かを抱えてるような雰囲気もなく、明るくおっとりした女性という印象をうけた。
そして夜、倉田さんの部屋に面している寝室に布団を広げて寝る準備をする。
布団に入ってウトウトしていると、妙な音が聞こえた気がした。
耳をよく澄ませてみる。
ギリギリギリギリ……
たぶん歯ぎしりの音だ……。
「クソが……ざけんじゃねぇぞ」
ん?
夕方に聞いた倉田さんの声よりも低い、女性の声。
「自分の毛がねぇからって人様の髪触ってんじゃねぇぞハゲ部長が。後輩のガキもチラチラチラチラ人の胸ばっか見やがってよォ……」
寝言とは思えない、ハッキリした暴言が聞こえてくる。
この晩、俺は眠れなかった……。
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