1.家族と私

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 父はいつも以上にいつも通りだったので、私はなんだか拍子抜けしてしまっていた。ドア越しで「どないやねん」と小声で呟いてみたが、父には聞こえるはずもない。だが、いつも通りなのはお互い様なのかなと思うと、気にもならなくなって平然と歩を進められた。  キャリーバックを抱えて2階から階段を降りていく。抱えたキャリーバックに遮られて足下が見えない。だが、この階段の幅、高さ、段数は全て私の身体に染み付いていて、もはや一体化しているようなものなのでまるで問題はない。  1階へと降りきった私は居間へと向かう。  我が家の居間には茶色のソファーが備え付けられている。ソファーの素材には合成皮革が使われているので、表面にはテラテラとした光沢が見受けられ、部屋の中ではかなりの存在感がある。このソファーは私が幼少期の頃からこの場所に存在しているベテラン選手なので、年季と共に威風までも醸し出しているよう。  ベテランに対面するように、横長の茶色いテレビ台が置かれていてこれは腰ぐらいの高さがある中々大型な代物である。この台上には先月新調したばかりの40インチフルハイビジョンの新入り液晶テレビが「我、この空間の主役なり」と、だんじりをするかのようにゴールデンルーキーの風体で意気揚々と構えている。  私が居間にたどり着くと、前方の窓からは光が差し込んでいた。あまりに眩しかったので、私は薄目をして調光しながら部屋を軽く見渡した。     
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