37人が本棚に入れています
本棚に追加
「いいよ。」
ミカはその場にゴロンとした。私はミカの周りに、ミカが数日前に引き抜いてしまった、くしゃくしゃなティッシュを出してばらまいた。しわを伸ばして、雪みたいに上から降らせたら、
きゃはは!
ミカはくすぐったそうに笑った。
雲の中で笑っているみたい。
あの人にも見せてあげようっと。私はスマホでパシャッと写真を撮って、夫に送信する。
それから私もミカの横にゴロンとする。手を伸ばして2人でもパシャっと撮る。
クスクスとティッシュの雲の中で笑っていたら、眠くなった。
ミカの首の下に手を差し入れ、抱き抱えるような形になって目をつむる。
ちょっとだけ、寝よう…。
※※※※※
夕焼けが色を失って、影が部屋を染める頃、玄関の鍵がカシャッと小さな音を立ててあいた。
「あははっ」
家にはいってくるなり、スーツを着た男の人は笑い声をたてた。
(スマホの写真に付いていた説明のコメントは、雲の世界の天使、だったっけ? うーん、実際見たらやっぱりただのティッシュだよ。)
(でも…、僕にだけは、ふふっ、やっぱりどう見てもティッシュだけどさ、僕にだけはね。)
カシッとスマホで写真を撮る。
「おーい、起きろー!」
それから二人を起こした。
スーツの人はネクタイを緩めながら、
(二人が目を覚ましたら、雲の中で、僕の2人の天使さん達は何の夢を見ていたの? って聞こう。)
と思った。
部屋にはティッシュと取り込んだ洗濯物がちらばり、この様子では多分、夕食も出来ていないだろう。
冷蔵庫からビールを出して、プシュッと開けて、グビッと飲む。
(だけど、もしかするともしかして。僕は今、幸せなのかもしれない)と思いながら。
最初のコメントを投稿しよう!