雲のなかで

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雲のなかで

 (眠っている時は、天使なのにねえ…)  柔らかな、薄いタオルケットにくるまれて眠っているのは、イヤイヤ期で第一次反抗期で、最初の自我の芽生え=自分でやる! を迎えた、二歳児の我が子だ。産んだ母親の私が言うのもなんだけど、ミカはかわいい。寝ている姿は、本当に天使みたいだと思う。  フワフワの茶色い髪。今はつむられているけど、髪と同じ色のまあるい瞳。肌はうぶ毛で淡く光っている。小さな口は、ピンク色。  ところがこのかわいい口がひとたび開くと、イライラや攻撃を容赦なくはなってくるのだから、ため息が出る。覚えたてのあやしい人語だというのに。  おお、それだけではなかった。このチビデビルは、気に入らないとペッペッとツバを吐く技を覚えたんだった。    「三歳になれ ば、またかわいくなるよ~。」と、子育ての先輩方は口をそろえるけど、まったく信用ならないと思っている。  だって子供を産むとき、あんなに痛いって誰も教えてくれなかった。産んだ後だって、別なところが痛くて、ドーナツクッションなしには座れないとかも教えてくれなかった。  それに産んだらお腹って元のようにちょっと出てる位の見慣れたお腹になると思っていたのに、  「もう一人入ってる?」  っていうくらい、お腹は肉やら皮やらでボヨボヨで、もうビックリしたっけ…。  だけど、産後はマイナスな事はドンドン忘れるホルモンが出てるっていうから、先輩ママ達はわざと教えてくれなかったというより、ただ単に忘れてしまったのかもしれない。私にしても、出産の時は、確かにあんなに痛かったはずなのに、今となっては、痛かった、っていうのはただの知識で、痛みの実感はとっくに消え去ってる。    ころん。  ドキッ。寝返りだ。もう起きちゃうの? もう少し寝ていて欲しかった。チラッと時計を見る。よし、さるが出て来るお気に入りのテレビアニメがもうすぐ始まる。もし起きたら、テレビを点けよう、と決める。  
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