第七話 『最後の悲劇 皆殺し』

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「まず、この数日間で多くの人間が死にました。神社の井戸から少女の首が発見されてから、毎日のように人が凄惨な状況で死んできました。とても人間が手を下したとは思えない、凄惨で、不可解な一連の変死。これは、鈴音様の祟り……皆様の中では、それが共通認識であると考えてよろしいでしょうか?」 「……勘違いするな。俺はあんたの疑いが晴れたとは思ってないぜ。あんたが鈴音様を騙って、皆を殺したんじゃないかってな」  比較的若い、屈強な男が鶴に詰め寄る。だが、鶴の笑みは崩れない。  事件は鶴の異能『誤催眠』によって引き起こされた。だが、その真相を知るのは鶴の他に俺のみ。  その真相に辿り着くことなく、この村人たちは鶴に皆殺しにされる。そう考えると、村人たちが少し哀れに感じられた。 「確かに、その可能性もありますね。けれど、どう証明するのです? あのような凄惨な自殺を、私が皆に強要させたと? そんなことが可能なら、それこそ……鈴音様ではなく、私が神なのかもしれませんよ?」 「ふざけるな! その化けの皮、すぐに剥がしてやるわ!」  だが、異能を持っていたとしても鶴は神ではない。ただ、己の感情に身を任せて殺人を重ねてきた獣、鬼畜だ。  彼女は……もはや神どころか、人ですらない。人の尊厳を捨て、復讐の鬼と化した。 「まぁ、ここで無駄な言い争いをしても意味がありません。はっきりさせようじゃありませんか、鈴音様の存在、そしてそのお力を」  目の前の男に目もくれず、再び鶴は群衆に語り掛ける。     
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