第七話 『最後の悲劇 皆殺し』

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「昨日もお話ししましたが、鈴音様はこの村の発展と復興を第一に考えておられます。それは技術や設備だけではなく、何より村人たちの心が豊かになることを望んでおられます。その一環として祟りを起こされた。皆が恐怖によって団結し、もう一度この村が一つになるため……彼らは犠牲となったのです」  群衆は静まりかえっている。鶴は言葉を続ける。  それは恐怖による沈黙なのか、それとも同様の沈黙なのか俺には分からなかった。 「そして、ようやく村は一つとなった。今日、皆さまがこうして私の元に集まられたのがその証拠です。鈴音様も大変喜んでおられます」  村は迫りくる死に対する恐怖で飲み込まれていた。そしてその恐怖が、村人たちを鶴のもとへ集わせた。  村人たちを恐怖のどん底に突き落とした後、皆殺しにする。これが鶴の計画した復讐の集大成。 「そこで、鈴音様は仰っておられます。皆に、最後の富と、懺悔を捧げたいと」 「最後? なんで、これが最後ってどういうことだよ!」  先ほどの屈強な男が、再び鶴に詰め寄る。  鶴の言葉巧みな誘導に、村人たちは少しずつ吸い寄せられている。死へと、村人たちは無意識に歩み寄っているのだ。 「鈴音様はこれ以上、自身が村に留まることは村の発展を妨げると考えられています。神を忘れ、あなた方の力だけで村を支えていく事が必要だと、鈴音様自身が導き出された答えです」  これは鶴の本心でもあったと思う。この村において鈴音様は呪い。その呪いを解かねば、村は変わらない。     
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