第七話 『最後の悲劇 皆殺し』

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「一郎……あれは、確かに戦争で死んだ私の息子です!」  老人たちは揃って子供たちの名を叫ぶ。戦争で、死んだはずの子供たちの姿が、彼らには確かに見えているのだ。  そして俺はようやくそのカカシを設置した理由を悟る。 「ご自身の目で、はっきりと見えたでしょう。一度死んだはずの、大切な人たちの姿が」  鶴は、あのカカシたちを、死んだ者たちの姿に誤認させているのだ。  それぞれの心に眠る、大切な人の姿であると……『誤催眠』を用いて幻視させている。  やがて、老人たちの他の村人たちにも『誤催眠』の効果が表れ始め、次々と対岸へ言葉を投げかけ始める。 「す、鈴音様……我々は、一体どうすれば……どうすれば彼らをこちら側、鈴音村へと迎え入れることができるのでしょうか」  老人の一人が、鶴の前で膝をつけて崇めるように問いを投げる。  彼らは死者を幻視したことにより、確信したのだ。この鶴という少女が、紛れもなく鈴音様の声を代弁する、神の使いなのだと。 「簡単な事です。この鈴音橋を渡り、迎えに行けばいいのです。ただ……一つ問題がありまして」  鶴は口元を醜く歪め、それを口元で抑える。  村人たちに希望を与え、そしてそれを容赦なく奪う。それが鶴にとっては愉快でならない。     
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