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「きっと運命だった。私が鈴音様によって肉の器に選ばれ、そして鈴音様と共にこの鈴音村を滅す。鈴音様が導いた、運命ね。鈴音様はきっと、自らの無念を私に払わすために『誤催眠』の異能を私に授けた。鈴音様と私の心を晴らすためにも、復讐しなければならない」
「けれど、やっぱり……人を感情に任せて殺せば、それはもう人じゃない、獣だ」
人に人を裁く権利など無い。
聖書の言う通りだ。俺たちはただ、神が罰を与えるのを願って、妹たちの死を受け入れながら生きていくしかないんだ。
俺たちまでが、祖父のような獣に成り下がる必要など無い。
「ああ、賢には人殺しは頼まないから安心して。人殺しの孫まで人殺しになったら、蛙の子は蛙だって馬鹿にされちゃうじゃない」
だが、鶴は笑えない冗談で俺をからかう。
鶴は本気だ。今目の前で不敵に笑う鶴は俺の知っていた鶴じゃない。
本当に、鈴音様が鶴に憑依しているようだった。
「何人かを……そう、戦争で心を壊したような人の方が良いわ。そういう都合の人を賢が選んで、私が殺すの。まるで鈴音様が村に罰を与えているような、祟りのような陰惨な殺人を起こすの。そして、最後は」
鶴は俺の方に向き直り、満面の笑みで言い放った。
「この村を、滅ぼす。私がもう一度、『鈴音三十人殺し』をもう一度思い出させてあげる。断るなんて言わないよね? 人殺しのお孫さん」
俺は、鶴の全てを見通すような目で見つめられ、首を縦に振る事しかできなかった。
「私は、獣に成り下がってでも復讐を遂げる」
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