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「まぁ、でも殺された片方の娘は白羽の所……ですよね? 裏切者が戻って来て早々に殺されたもんだから、もしかしたら本当の祟りなのかもって期待したんですけど……へへ」
私……笛吹 静子は白羽の名前を強調して口にする。
正直、祟りだろうが何でもいい。村を捨てたあの一家の娘が、晒し首になっていたことがたまらなく気分が良い。
「え、ええ。そうね……笛吹さん、鈴音様の信仰には熱心だから……」
私の言葉に、まるで思っていないような反応をする二人の主婦。この二人も、私をあの工藤と同じような目で見る。哀れむような、悲しい目。
村人たちは白羽の人間が死んだことを悲しむ様子など無い。むしろ、裏切者に罰が当たったくらいで、気分が良いくらいだ。
「まぁ、工藤さんの娘さんには同情するけど……あんなイカれジジィを放っておくのも困るわよねぇ」
工藤 源氏は現在、形上は村の診療所に入院しているが、実際には入院ではなく監禁だ。治る見込みもないのだから、治療もしない。ただ、ベッドに縛り付けているだけ。
工藤の家もそれで納得したというのだから、他の村人に反対する理由は無かった。
結局、その日は日が沈む寸前まで白羽の悪口で二人は盛り上がったようだ。私とは話が噛み合わないようで、ほとんど会話が成り立っていなかったが。
二人とも家族の元へ帰り、これから食事を用意し、共に団らんを楽しむのだろう。
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