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「……白羽の、裏切者」
目の前に立っていたのは、白羽 鶴だった。
だが、以前までの印象とはだいぶ異なっていた。なんというか、表情が明るい。
そして、その笑みには狂気的な何かを感じた。
「突然ですか……あなた、鈴音様の存在を信じていらっしゃいますか」
白羽 鶴は丁寧だが、圧力のある声で言った。
何を言い出すかと思えば、妹の晒し首を目の当たりにして気でも触れたのだろうか。
「ええ、もちろん。鈴音様への信仰を継続すれば、私も、夫も、息子も皆が救われるのです」
「いいえ、それはあなたの思い込みです。鈴音様も万能ではないのです」
白羽 鶴は私の言葉を遮るかのように反論してきた。
「なんで……あなたにそんなことが」
「分かりますとも。だって私は、鈴音様の御言葉の通りに動いているのですから」
この娘、本当に気が狂っているのか。
不気味さと共に少し興味がわいた。妹は死に、姉は狂った。何と愉快な話だろう。
もう少し意地悪をしてやりたい、そんな気持ちに逆らえず私は娘を家に上げた。
まるで、私と同じような不幸を背負っている彼女に、興味が湧いた。
部屋に上げてやった後も、娘はずっと話し続けていた。
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