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私は半分聞き流していたが、どうもただのホラ話には聞こえなかった。
「鈴音様は今、この村にいらっしゃっています。その証拠に、昨晩は凄惨な事件が起こったでしょう? あれは、鈴音様があの老人を乗っ取り、直々に起こした祟りなのですよ」
「鈴音様が村を貶めるような事をするわけがないでしょう。あなた……妹さんがあんな目に遭って、同情はしますが……神の名を騙るような真似は止めなさい」
私は低い声で脅す。だが、白羽の娘は怯えるどころか、薄ら笑いを浮かべたままだ。
「敗戦後も未だに古い、愚かな価値観に捕らわれ、村人たちが村を腐らせている。その証拠に、未だに外部から孤立して復興も遅れている。鈴音様はあなた方に大層呆れています。これをきっかけに、村が新しく生まれ変わってほしいという鈴音様の愛情でもあります」
娘はスラスラと言葉を吐き出す。その様子を見れば、娘が適当に受け答えをしているわけではないことは明白だった。
まるで、本当に鈴音様の声を代弁しているかのようだ。
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