第四話 『第二の悲劇 針千本』

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 骨人形……鈴音様の御神体が村を離れたことにより、全ての災いが降りかかったはず。  なのに、何故その骨人形をこの娘が持っている? 「なぜ? 簡単な事です。鈴音様に指名を課せられたのです。村を救え、と。村を捨て、村の穢れから救われた私にこそ、この村を救う力があると」  私の中の疑念は、薄まりつつあった。この娘、本当に……。  揺れ動いていた私の心は、骨人形を目の当たりにしたことにより更に大きく揺さぶられた。  目の前の骨人形にそっと触れる。それは、寸分の狂いもない、確かに骨人形であった。  生きているかのような精巧な造形、そして……中でカラカラと音を奏でる、鈴音様の遺骨。 「さぞ辛かったでしょう。表では息子の死を悲しむこともできず、勇敢な死であったと虚勢を張る。親であるあなたにとって、これがどれだけ辛かっただろう」  娘は優しく私を抱きかかえ、言う。  その温かさは、少女のものとは思えなかった。この娘は、息子の死を言い当てただけではなく、私の心の叫びすら言い当てたのだ。  私は、無意識に涙を流していた。村の者たちが私の心を理解せず、厄介者扱いしてきた中、この娘……いや、鈴音様は理解してくださった。  私は確信した。目の前の少女は……確かに鈴音様の御意思を継いでいると。     
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