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「鈴音様はこう仰っています。戦争を止める力もなければ、人を蘇らせる力もない。だが、あなたを器として、息子の命を流し込むことはできる」
「それは……」
私は、娘に縋っていた。
たったこれだけの事で、この少女を神の使いだと信じ込むのはどうかしている。
けれど、縋るしかなかった。救われる可能性があるのなら、それに賭けようと。
真実かどうかではなく、真実であってほしい。私は目の前の少女の神秘的な何かに縋るしかなかった。
「これは戦場で灰となった息子さんの骨です。見てください、この無数の針のような骨の欠片を。息子さんの肉と骨はそれほどまでの威力を受けて……」
娘はどこからか木箱を取り出し、私の目の前に置く。
その木箱の中には、針の様な骨の欠片で満たされていた。そして、その中には遺骨と共に私が息子に持たせたはずの古びたお手製の巾着が入っていた。
「これは、息子の……息子の亡骸なのですか? けれど、息子は」
だが、息子の死体は見つからなかったはず。
「鈴音様が黄泉の国から取り寄せたのです。けれど、魂と血肉を取り戻すには母親であるあなたの力が必要なのです。彼は爆発で身体を粉々にされ、戦場の業火に焼かれ、息絶えた。そんな彼をあなたの身体を器として、宿す。つまり、あなたは死に、息子はあなたの身体に宿る。そのためには、あなたには覚悟が必要です」
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